基本理念
従来よりカウンセリング・心理療法の世界では、その個人が抱える問題や症状に対応する形で、その個人の内面に何らかの原因となるものがあるという考えが主流となっていました。
例えば、フロイト(Freud, S)が創始した精神分析療法では、その個人の無意識に置かれてある未解決な葛藤や未統制な欲求が症状という形で現れるという理解がなされています。こうした理解の下、その無意識下の葛藤や欲求を言語化して、洞察を得ることで、治療が進展するというモデルが示されています。
また、精神分析と並んで日本国内で主流とされてきた、ロジャース(Rogers, C)が創始した来談者中心療法においても同様に、心理的な問題や症状は個人の内面と結びつきものと考えられています。来談者中心療法では自分自身に対する自己イメージや評価と、実際の経験との間での不一致によって心理的問題や症状が生じるというモデルが示されており、カウンセラーの側では、来談者が潜在的に備えている自己実現へと向かう傾向を引き出すように努めることが大切であるとされてきました。
これらの方法論に対して、ブリーフセラピー(Brief Therapy: 短期療法)では問題の所在を精神病理やパーソナリティといった個人の内側に想定するのではなく、個人と個人の相互作用の仕方から問題の理解を図り、「原因探し」よりも「解決」に重点を置き、比較的に短期間での変化を志向するという点に特徴があります。
ブリーフセラピーはアメリカ西海岸のパロアルトにあるMRI(Mental Reseach Institute)で主に開発がなされてきたカウンセリング・心理療法の手法です。ブリーフセラピーでは個人と個人の相互作用の中で問題を維持させている悪循環を断つという志向性と、問題が起きていない良循環を拡張するという志向性があり、これらを両輪として、問題解決への働きかけを行っていきます。
ブリーフセラピーの基本的な考え方
ブリーフセラピーでは問題の原因よりも解決に着目することから、現時点において”問題が起きていない時、比較的にマシである時”である「例外」(Exception)に目を向けます。そして、その「例外」状況を生んでいる行動やコミュニケーションの仕方を特定し、「例外」が増えるような働きかけを行います。こうしたアプローチを「Do more」と呼びます。
ただし、場合によっては「例外」状況の特定が困難であることもあるかもしれません。その場合には、問題維持に強く関係していそうな悪循環的なパターンの特定を図り、そのような従来のパターンとは異なるパターンを作れるような行動やコミュニケーションが生まれることを意図した働きかけを行います。このようなアプローチを「Do different」と呼びます。
こうした「Do more」と「Do different」という二つのアプローチを通じて、ブリーフセラピーにおいては、相談をされる方の「解決」に向けての助力となれるようなカウンセリングを展開しています。